長崎県波佐見町にあるジビエ処理施設モッコの代表じょうごです。
6月に入って、厳密に言えば、田んぼの水が張られたのち、町中から、
「イノシシが畑を荒らして困っている、捕獲をお願いできないか」との
お電話が、これまでにイノシシを捕獲した地主の方から寄せられます。
そして、住宅地にある我が家の近辺にも、足跡がとても増えています。
同じ長崎県では、比較的人口の多い大村市において住宅街にて、
子どもと大人がイノシシに襲われて怪我をするという事件が起きています。
大村市の住宅街でイノシシにかまれ5人がけが イノシシは捕獲 NHKNEWS WEB
どうして、この時期にこのようなイノシシが普段見られない場所にやってくるのか、
理由は簡単でお腹が空いているのです。
上記の大村市で捕獲されたイノシシは体重が50kgから60kgとのことで、おそらくメスだと思われます。
今の時期、長崎県においては出産から子育て時期のメス猪が多く存在します。
上記の写真は、残念ながら疥癬病にかかりお肉にならなかったのですが、
6月13日嬉野市の猟師さんが捕獲された50kg程度のメス猪です。
この個体には、胎児がおりましたので、当然ながら栄養分を取られております。
また、出産したのちには、母乳をあげる必要があるので同じく餌を必要とします。
梅雨の時期の今、水は容易に手に入りますが、タケノコシーズンが終わり、
自然界で餌が豊富になる秋までは、比較的栄養価が高い人工物を狙う時期に入ります。
また人間と同じ哺乳類ですので、子育て期には鉄分不足になります。
そのため、昆虫など鉄分が含まれるタンパク質のある食べ物も積極的に食すと思われます。
また、子育て期のメス猪に限らず、冬場に生まれた個体であっても、
餌が比較的乏しい時期になりますので、それまでの生息エリアを出て、
どうにか食料を探そうと必死で動き回る時期になります。特に発達期においては。
こちらは先月末私が捕獲した15kg程度の個体ですが、お腹は凹んでいました。
餌を求めて、普段はイノシシが生息することが少ないだろう住宅地裏の、
畑を作っていらっしゃる土地にまで侵入してきていました。
イノシシ侵入の一方を受けて、誘引のために米糠を10kg撒いて一晩で、
まっさらに食べていたことを踏まえても、家族で相当空腹だったと思われます。
人間でも十分に想像いただけると思いますが、子どもを産むのは一大事です。
どうにか、お腹の中の赤ちゃんを守ろうと、母体は栄養を蓄え、
赤ちゃんの安全を最優先に行動すると思います。イノシシも同じことです。
だから、たまたま食料を探し求めて市街地に出て、自分自身や既に出産した
子どもに対して危害が加えられる事態に直面すると、反撃に出る機会も増えます。
だから、普段あまり人に接することを避けようとするイノシシであっても、
攻撃的に反抗してくるケースも容易に考えられます。
是非とも、特に今の時期、イノシシに遭遇しても近寄らないこと、
万が一、崖などから突然に目の前にイノシシが現れたら目を合わせて、
向こうが去るまで、そっと後退りするか、動かないでじっと睨みを続けること。
それを徹底していただきたいと思います。
自分自身に危害を加えない人に対して、無理やり突進していくケースは稀です。
ただし、傷を負っていたり、子どもを探している場合、想像ができない行動を取ります。
イノシシは、全身筋肉質で、自動車にぶつかっても平然としている強靭な身体の持ち主です。
決して、向かい合おうとしないでください。
プロの猟師でも毎年のように命を落とされています。